工芸。
ある百科事典によると、「高度の熟練技術を駆使して作られた美的器物またはそれを制作する分野。応用美術、装飾美術などともいう」そうです。
そんな工芸が一同に会する展覧会を観て来ました。
日本橋三越で開催中の「日本伝統工芸展」です。
会場には作家さんたちが丹精を込めて作り上げた作品がずらりと並んでいます。
この工芸展に入選するだけでも大変な一大事なのですが、入選を繰り返し、腕も上がり、文部科学大臣賞を受賞などいう事になると、その価値はグングン上昇し、それが必然的に価格にも反映されます。「ハク」だって付きます。
作家として、それは素晴らしく輝かしい勲章です。
でも「先生」と呼ばれる方が作られたモノを見れば見るほど、「これっていつ、どうやって使うんだろうか・・・」と考え込んでしまう事が多いのも事実。例えばバッグなら、飾って愛でるために一つずつ丹精込めて作るのではなく、実際に便利に使って頂いて、使って下さる方ご自身に、より輝きや彩りをそっと添える事が出来るような役割を持たせて作り上げるモノであると僕は思っています。「見てるだけ~」ではなんのためにバッグなのだか分かりません。
伝統的な技術を駆使して作られるからこそ「工芸品」となるのですが、「見てるだけ~」な飾っておくモノを「工芸品」と呼ぶようなイメージになってしまうと、「売れなくて困るんだよな~」と言った声もあちらこちらで聞かれている工芸品には明るい未来が見えてきません。
どうやったら工芸品を身近に、親しみを持って感じて貰えるものなのか。
工芸品業界の一番端っこにいる僕ですらそんな事を考えています。
売れないから止めよう!では、これまで長い歴史を紡いで来た「工芸」に何の意味もありません。「無駄をなくした身軽な暮らし」がトレンドになりつつあるのであれば、無駄を省いた造詣美を楽しんでもらえる、使いやすい商品も投入していかなければならないのかも知れません。
使ってもらってナンボ。
実際に使ってみて、楽しく嬉しい気持ちになってもらってナンボ。
幸せな気持ちになってもらってナンボ。
使いやすいように、代々伝わって来た技術はそのままに、時代に合うように工夫を凝らして変化をさせ、仕上げて行くことこそが「工芸品」だと思います。
工芸品が持つ素晴らしさや機能美は日本ならではな造詣美です。
それすら日本から消えて無くなってしまわないように、まずは自分が身を置くハンドバッグの分野で色んな事にチャレンジして行かねば!ともがく今日この頃です。